なんとなく終末系の漫画が好きなので色々と読んできたのですが、最近読み返して個人的に再熱しております。
そう、その名も「ヨコハマ買い出し紀行」です。
他の終末系の漫画とは違い全くサバイバル要素などは無く、物語は終始ゆったりと進んでいきます。ほっこりと心が温かくなるのに、時折さわやかな切なさを感じさせるオススメの漫画です。
主人公はカフェを営むロボット「アルファ」
カウンターで黄昏る主人公 アルファ |
閑古鳥の鳴くカフェを経営しながら、出掛けたまま帰ってこないオーナーを待ち続けるロボットの主人公アルファ。
見た目は人間と同じで、全くロボットだとはわからない。感情の機微もあり最初から人間らしい彼女が、長い時間を過ごすことで成長し「ロボットだから分かる人間的な辛さ」を感じていくところも見どころの一つです。
この漫画は主にアルファと周りの人や、友達のロボットとの日常をほのぼのと描いていきます。
水没した世界で生きる人々 世界観がとてもいい!
水没してしまった道 |
舞台は温暖化による海面上昇で水没した日本。
人類には新しい技術を生み出す力はもうなく、昔の物を修理して使っているような世界。少なくなった陸地に少なくなった人類が肩を寄せ合って生きている。
私たちの生きる現代とは違い、少しSFチックなのもまた心惹かれるポイントです。
人々の生活が見ていて楽しい
ガソリンスタンドのおじいちゃんとのやり取り |
地元民のおじいちゃんのガソリンスタンドで給油するシーン。
昔住んでいた街が海の底に沈んでも、人々は何かの仕事をして暮らしている。
それはガソリンスタンドだったり、配送だったり、カフェのマスターだったり、海面上昇後の生活ぶりを見るのがとても楽しい。
土地面積が少なくなったので牛乳が割と高価なものだったりとか、残ってる道は殆ど尾根道だとか、そういう世界観に触れる度ワクワクしてしまうのは僕だけでしょうか。
賑わうヨコハマの街 |
アルファのカフェはかなり辺鄙な所にあるため、地元の人は老人が大半だが、ヨコハマはそうでもない。場所に寄ってはそれなりに人が居て、しっかりとした街が形成されている。
彼女がどこかへ行く度に映る街並みや風景がとても綺麗で、けれども漂う終末感がとても不思議な気持ちにさせます。
ほのぼのと近づく人類の終末
地元の少年が街を離れることを告げたシーン |
作中のとあるシーン。人とロボットの時間の対比がとても切ないけれど、少し心温まる。ずっと背の小さかった少年がすっかり大人になり、アルファよりも大きくなる。けれどもアルファの見た目はずっと変わることはないのがまた切ないです。
物語はほのぼのと、そして淡々と進んでいきますが、海面上昇が進んでいき徐々に人類が衰退していきます。
ロボットと人の時間の流れがとても切ない
自分が死んだ後、土地を譲ると言ったおじいちゃん |
物語も終盤に近付いていくと、ロボットに流れる時間が人にとっては長いものだという描写が増えてくる。
アルファは身近な人の死を初めて意識するシーンは、何故だか死んだ僕のおばあちゃんを思い出しました。ガソリンスタンドのおじいちゃんもすっかり白髪になり、自分の死んだ後の話をしてしまいます。
アルファの「心」も成長していく
心の成長を言われ、きょとんとするアルファ |
人間からすると無限に近い時間を生きる彼女。様々な出会いを通して彼女自身も成長していきます。見た目が変わらなくても徐々に感じ方が変化したり、オーナーのことを考え無い日ができたりします。
読み進めるにつれて本当の意味での「人間味」のようなものが出てきて、ロボットでもない、人間でもない彼女がアルファとして生きているのだと感じました。
どちらとも「形容しがたい存在」の彼女の視点で描かれる日常はどこかとても懐かしく、どこかで通ってきた自分の原風景な部分を刺激されました。
さわやかで切ない、けど優しい読後感
管理する人が居なくなったおじいちゃんのガソリンスタンド |
ここまでお読みいただきありがとうございます。お疲れ様です。
この漫画は終始優しい雰囲気で進んでいきますが、ところどころに終末を感じさせる部分があります。終わりも悲しいお話ではなく、夏の夕暮れを思わせるような切なくて優しい読後感でした。
気になった方は是非読んでみてください。
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